軽貨物運送業を始める際に用意しなければならないものは?
軽貨物運送業で個人として働いていきたいという人もいるでしょう。しかし、始めるまでに何をしておく必要があるのかがわからずに困ってしまうこともよくあります。個人でも比較的容易に独立して事業を始められるので、どのような準備が必要になるのかを詳しく理解しておきましょう。
開業のための手続きを進める用意
軽貨物運送業で開業するためにはおこなわなければならない手続きがあります。個人事業主として事業を始めることになるのが一般的なので、個人事業主の開業届を提出することがまず必要です。
ただ、軽貨物運送業の場合には一般的な開業届だけでは不十分で、運輸支局と軽自動車検査協会での手続きをしなければ開業することができません。このために何を用意する必要があるかを理解するためには手続きの概要を理解しなければならないでしょう。
軽貨物運送をするためには軽貨物車両を用意することが必要になります。その準備ができていて事業をするための適切な用意も整っていることを運輸支局と軽自動車検査協会で示すことが求められています。
まずは軽貨物車両として軽トラックや軽バンを調達することが必須です。一台以上あれば良いので個人事業としておこなうのであれば自分が運転する一台だけまず手配するのが適切でしょう。
一般的には独立して事業をおこなう人の場合には購入して登録する方法が選ばれていますが、リースで手に入れて初期費用を節約しても問題はありません。仕様としては原則として乗車定員が2名以下であることが求められている点にも注意しましょう。
そして、運輸支局で必要書類を整えて提出すれば不備がない限りは受理されます。運輸支局で提出しなければならない書類は軽貨物自動車運送事業経営届出書、貨物軽自動車運送事業運賃料金表、事業用自動車等連絡書、車検証の四つです。軽貨物自動車運送事業経営届出書と事業用自動車等連絡書はフォーマットに従って必要事項を記載していくだけなので準備にあまり手間取ることはありません。
しかし、貨物軽自動車運送事業運賃料金表については運送するときに必要になる料金を明示した表を作らなければならないので事前に作り上げておくことが必須です。距離制運賃、時間制運賃、割増運賃に加えて、車両留置料などの詳細を記載しなければならず、今後の事業展開にも大きな影響を及ぼすので慎重に考えてから手続きに行きましょう。
軽自動車検査協会で必要になるのは事業用として利用できるナンバープレートを作成することです。運送業をするためには軽自動車に黒色のナンバーを付けることが必要になります。そのため、運輸支局で手続きをするときに作成した事業用自動車等連絡書と車検証、ナンバープレートを提出するだけなので事前に準備するものは特にありません。先に軽自動車検査協会で手続きをすることはできないので順番を誤らないようにすれば大丈夫です。
開業するために必要なものを揃える準備
軽貨物運送業を開業するためには必要条件を全て満たさなければならず、上記の手続きをする以外にも準備をしなければなりません。
まず、個人事業主として開業するときに必ず準備しなければならないのが営業所です。事務所物件や店舗物件などのように事業所として利用することが可能な物件を手に入れるか、持ち家なら自宅を営業所にするかになります。賃貸物件に住んでいる場合には営業所として登録できない場合が多いので注意しましょう。バーチャルオフィスやレンタルオフィスなどを使用することも可能です。
ただ、休憩・睡眠施設が必要なことには留意しなければならないでしょう。営業所に併設で休憩や睡眠ができる場所を設けなければなりません。バーチャルオフィスなどの場合には仮眠室などが付いているところを選んで利用できる契約をしておくことが求められます。自宅であれば寝室などを休憩室として扱うこともできます。
また、営業所と併設する形を原則として車庫も準備する必要があります。営業所から2km以内であれば許可は得られるので、自宅には置けない、バーチャルオフィスなどを使うから車庫がないという場合には近隣の駐車場を契約すれば問題ありません。
運送業を担う上では安全かつ確実な運行を可能にしつつ、トラブルがあった際の対処もできるような運行管理体制を整えることも求められます。運行管理者の資格は取得していなくても問題はありませんが、トラブル対策のために保険への加入は義務付けられているので注意しましょう。
自賠責保険だけでなく任意保険にも加入しなければならず、対人対物の補償だけでなく貨物保険にも対応している保険でなければなりません。保険料を安くしようとしてネット申し込みができる保険を探してもあまり対応していないので注意しましょう。店頭で受け付けている保険会社に相談するのが無難で、保険商品の比較提案をしている業者に依頼して紹介してもらうのも良い方法です。
もう一つ重要になるのが運送約款の策定です。運送料金表については開業手続きのために必要になるので早い段階で準備しておかなければなりませんが、開業する段階ではより細かなルールを定めた約款を用意することが求められています。
運送をする上でどのような責任を持つか、事故や遅延などの際にどんな措置をとるかといったことを明記するのが約款です。国土交通省が定めている運送約款があり、そのまま使用する場合には約款を準備する必要はありません。ただ、内容についてはきちんと確認して不都合なところがあるなら独自の約款を作るようにしましょう。
最後に重要なのは開業と運転の資金
軽貨物運送業に限らず開業をしたらお金が必要になります。開業するときには十分な資金調達をすることが欠かせません。軽車両の購入費用が開業の段階で必要になり、各種手続きをするための費用も負担することになります。
さらに運送をするときにはガソリン代を負担することになり、長距離の場合には高速道路の料金を払わなければなりません。収入を得られればカバーできるのは確かですが、後払いが普通なのでまずは事業資金から支払う必要があることを念頭に置いておきましょう。長期的に見ると車の保険料や整備費、車検費用なども資金として必要になります。
この他にも個人事業主の場合には健康保険や国民年金などの保険料も支払わなければなりません。確定申告や経理の帳簿作成を税理士や公認会計士に依頼する場合には報酬も支払うことになります。このようなさまざまな経費が掛かることを想定して資金を調達しておくのが大切です。自己資金では足りない場合には創業融資などの利用も検討しましょう。
独立して軽貨物運送業を開業したいときには用意しておく必要があるものがたくさんあります。事業用に使用できる軽トラックなどの軽車両を用意して運輸支局と軽自動車検査協会で手続きをしなければ開業できないので必要書類の準備も整えておきましょう。
また、営業所や休憩・睡眠施設、車庫のような設備要件を満たさなければならないことに加えて、運送約款や料金表、運行管理体制なども整えることが必須です。
そして、開業資金や運転資金を十分に確保しておくことが重要になります。特に車両の維持管理費用や運送時に先払いする高速料金などが大きな金額になりがちなので注意しましょう。