軽貨物運送業の独立開業するためには資格って必要なの?
軽貨物運送業の独立開業をしたいと思っていると、事前に何を準備したら良いかでさまざまな疑問が生じてくるでしょう。特に業種によっては開業するのに資格が必要なこともありますが、軽貨物運送業の場合には必要なものがあるのでしょうか。
独立開業するだけなら資格も許認可もなくて問題なし
結論から言えば独立開業のために必須の資格はありません。軽貨物運送業の主な業務は積荷を預かって目的のところに車を使って運んで届けることで、特別な知識や技術を求められることはないからです。
運送業を営なもうとしたときには運行管理者、運行管理補助者が必要になり、さらに法令試験を受けて運送業の許可を得なければなりません。また、運送に使用するトラックなどの整備ができることも求められるため、整備管理者として自動車整備士などを置かなければならないという決まりがあります。ただ、個人事業としておこなう軽貨物運送業の場合には運送業許可を受けなくても問題はないのが通例です。
一般的に個人事業の開業者に向けて出されている求人では一般貨物自動車運送事業または特定貨物自動車運送事業に関わる仕事になっています。すると、例えばこの仕事を請け負うには一般貨物自動車運送事業許可を受けなければならないと考えるかもしれません。
ただ、一般貨物自動車運送事業とは、事業用自動車を使用して複数の荷主の貨物を有償で運ぶ事業のことを指し、特定貨物自動車運送事業の場合には、事業用自動車を使用して特定の一社を相手にした有償で貨物を運ぶ事業のことを指しています。
また、実は運送業にはもう一つ分類があり、貨物軽自動車運送事業も知られているものです。この場合には事業用の軽自動車や125cc以下の自動二輪車を使用して荷主の貨物を有償で運ぶ事業を指します。この中で、いわゆる運送業許可が必要なのは一般貨物自動車運送事業、または特定貨物自動車運送事業の場合です。
つまり、軽自動車を使って事業をおこなう限りは運送業許可を取得する必要がないということになります。通常、軽貨物運送業をおこなうときには軽トラックや軽バンを使用するのはここに理由があり、許認可を受けずとも車両を貨物軽自動車登録するだけで事業をおこなえるのです。
ただ、自分は4tトラックを使って運送業を営みたいという人もいるでしょう。この場合には一般貨物自動車運送事業または特定貨物自動車運送事業になってしまい、運送業許可を受けなければならないのが原則です。運行管理者や整備管理者などを設置するのに加えて、資本金などの要件もみたさなければならないので個人で運送業許可を得るのはかなり難しいということは理解しておかなければなりません。
自分がドライバーになるなら運転免許が必要
独立開業するときには自分が軽貨物ドライバーになって運送を担うという計画を建てる場合が多いでしょう。実際に仕事を担う人は軽トラックや軽バンなどを運転することになるので自動車運転免許を持っていなければなりません。
業として人を乗せて運転するわけではないので第二種免許を取得する必要はなく、普通免許さえ持っていれば問題ありません。普通自動車免許で車両総重量1.5トンまで、積載量2トン未満まで運転できるからです。
軽トラックの最大積載量は軽自動車と同じなので350kgまでで、車両総重量もせいぜい12トンくらいになっています。そのため、貨物軽自動車運送業の範囲内で仕事をする限りは準中型免許や中型免許などのより大きなトラックを運転するための免許を取得する必要もありません。
ただ求人を獲得しやすくするという意味では資格を取得したり、検定に合格しておいたりすると良い可能性はあります。ちょっとした能力があるだけで他のドライバーよりもこの人のほうが良いと判断してくれることもあるからです。
例えば、外資系企業からの荷物の依頼という場合には英語で対応できる人が好まれる傾向があります。国内のオフィスにも外国生まれの人がいて、日本語は上手に話せないというケースも多いからです。
英語に関わる各種検定試験に合格していたり、高いスコアを取っていたりすると優遇してもらえると考えられるでしょう。これは語学全般に言えることで、中国語や韓国語、フランス語やドイツ語などであっても同様です。
引越しの依頼の場合には個人への対応が必要になり、海外からの単身赴任者や留学生から荷物を預かることもあります。語学力に長けている人ならこのようなシーンで重宝されることになるのです。
一方、情報技術関係の資格があるのも有利になる可能性があります。運送業の現場はIT化が急速に進められていて、POSと連動したシステムも運用していることが珍しくありません。仕事の内容によってはそのシステムを使うことが必要になるため、すぐに慣れて滞りなく仕事ができる人が求められます。ITに関する知識や技術がある人なら安心だと考えてもらえることから、システムを頻繁に使用する仕事を選ぶ場合には有利になるのです。
経営者として従業員にドライバーを任せても良い
通常は運送業者で働いていた人やアルバイトをしてきた人などが独立開業を目指すので、もともと普通自動車免許やそれよりも上位の免許を持っている場合がほとんどです。しかし、運送業に関わりがない仕事をしてきた人が個人事業主になりたいと思って軽貨物運送業に興味を持つこともあります。
また、重大な事故を起こしてしまって免許停止あるいは取消になってしまった人が開業を目指すというケースも考えることが可能です。他にも年齢的に免許は返上したほうが良い時期になってから独立をしようと考えるケースもないわけではありません。このような場合には自分は普通免許を持っていないのでドライバーとして働くことはできません。
ただ、それでも個人事業を立ち上げて求人を獲得して働いていくことはできます。個人事業主でも従業員を雇って事業をおこなうことができるからで、その従業員が普通免許を持っていれば問題ないのです。
よくあるパターンが家族経営をする方法で、夫や妻のどちらかが経営者になり、パートナーや子供がドライバーになるというものです。この場合には家族を従業員として雇うことになり、結局は人件費が同じ家計の中に入る仕組みになっています。青色申告をすれば節税にもなる点でよく注目されている方法です。
また、運送業で働いていたときの同僚や定年後の上司を従業員として迎え入れることもないわけではありません。この場合にはその人たちが自分で独立開業するよりもメリットが生まれるように求人獲得に注力するなどの工夫が必要になります。しかし、従業員を使えば自分は運転できなかったとしても軽貨物運送業を営むことはできるのです。
軽貨物運送業の独立開業には資格は必要ありません。運送業の開業には許可が必要になることがありますが、軽トラックや軽バンを使って事業をおこなう限りは貨物軽自動車運送業として認められるので、貨物軽自動車の登録だけ忘れなければ大丈夫です。
ドライバーは普通自動車の免許を持っていることが求められます。家族経営をする場合などには経営者が免許を持っていなくても、従業員が持っていてドライバーを担えば差し支えありません。
ただ、求人を獲得するうえでは語学力や情報技術の知識や技術などがあると優遇されやすいので、関連する資格を取得しておくのはプラスになるでしょう。